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第三 税法と棚卸資産評価連続意見書第五 繰延資産についてドキュメント情報


「棚卸資産の評価について」注解


(注1) 公表貸借対照表に記載する生産品原価として、予定原価又は標準原価を容認するかどうか、原価要素の価格(材料価格、賃率および製造間接費配賦率)の一部又は全部を予定で計算した生産品原価を容認するかどうかには問題があるが、本意見書としては、会計専門家の一般的見解にしたがい、予定又は標準が適正に決定されており、原価差額が合理的に僅少である場合には、これらの原価を棚卸資産の貸借対照表価額となしうることとした。原価差額が合理的に僅少である場合という表現は、実際価格又は実際発生費用の側に異常性、不能率が存在するために多額の原価差額が生じても、それは多額の原価差額に該当しないという意味をもつのである。予定又は標準が不適正な場合においては、原則として原価差額の調整を行なうべきである。したがって原価差額についてはその性質(発生原因)を明らかにし、期間費用とすべきものと製品原価とすべきものとを区別することが必要である。後者の差額はそれが期間損益に対して微細な影響しかおよぼさない場合を除き、これを調整して売上原価および期末生産品原価に配分する。


(注2) 副産物の評価には、修正売価法のほか、取得時の評価をゼロとしてその売上高を主製品の売上原価から差し引く方法、代替品の取得原価の見積額をもって取得原価とする方法(概して副産物を自家用に供する場合に適用する。)、主副製品分類後の加工費をもって取得原価とする方法、一定の名目価額又は固定価額をもって取得原価とする方法等、多種多様な評価方法が適用されている。修正売価法は、副産物の唯一の評価方法ではない。これらの評価方法の選択は、副産物の性質、市場性、当該企業における副産物の重要性等に基づいて行なわれるべきである。市場性のある副産物については取得時の評価をゼロとする方法をとる場合でも、期末には修正売価による評価を行なうべきである。


(注3) 原価率の算式における分母から値下額および値下取消額を除外して原価率を計算し、これを期末商品の小売価額に適用すれば低価基準の評価額が求められる。したがってこの原価率による売価還元法を売価還元低価法とよぶことができる(売価還元低価法については本文第一、三、2参照)。
 売価還元法の全体は、取得原価基準に属する評価方法と低価基準に属する評価方法の両者を含むものと解さなければならない。


(注4) 最終取得原価法(購入品にあっては、最終仕入原価法又は最近仕入原価法、生産品にあっては、最終製造原価法又は最近製造原価法)は、わが国におけるきわめて多数の企業によって課税所得計算目的のために利用されているが、この方法は多額の評価損益を計上する可能性をもつので、これを無条件に企業会計にとり入れることは妥当でない。この方法の利用は本文に述べたような要件を満たす企業の場合に限られるべきである。
 最終取得原価法に類似した評価方法に時価法がある。時価法は時価主義を具体的に適用するための評価基準、すなわち時価基準に属する評価方法の総括名称である。時価法には、期末における再調達原価をもって棚卸資産評価を行なう再調達原価法と、期末における修正売価をもって棚卸資産評価を行なう修正売価法とがある。修正売価法は本文第一、二、3に述べるような一定の前提が存在する限り、本質的には時価法に属さないものとなしうる。わが国における若干の企業は時価法を適用している。時価法は、期末棚卸資産の取得原価を把握する手数を省略しようとする企業、又は会計要員の不足のために、取得原価の正確な把握が事実上行なわれがたい企業、会計帳簿が不備であって取得原価が明りょう正確でないと認められる小企業の場合に利用されているのである。しかし時価法は多額の評価損益を計上する可能性をもつので、その利用を避けることに努めるべきである。
 財産貸借対照表(特殊貸借対照表)にあっては、時価基準は唯一の評価基準であるが、期間損益算定を目的とする決算貸借対照表にとっては、時価基準は否定されなければならない。


(注5) 基準棚卸法にあっては、まず正常販売量、正常製造量に基づいて材料、製品等の最低必要手持量(基準量)を定め、これに最低取得原価(過去のデータおよび将来の見込みに基づいて決定する。)、すなわち基準価格を付する。この場合、基準棚卸法を採用する初年度における基準量の期首帳簿価額が基準価格による金額をこえる額は利益剰余金に課して切り下げる。基準量をこえる手持量は、これを通常の取得原価基準による取得原価をもって評価する(基準量をこえる手持量を時価基準で評価することもあるが、評価損益の計上を避けるには取得原価基準によることが望ましい。)。各年度末においても常に基準量は基準価格で評価し、超過量は取得原価で評価するが、年度末の手持量が基準量を割っている場合には、その不足量を再調達原価等で評価し、同額の食込補充引当金を設ける。

 払出材料、払出製品等の原価は、次の算式によって求められる。

(基準量の基準価額±期首超過量の取得原価額又は不足量の再調達価額)+当期受入量の取得原価額−(基準量の基準価額±期末超過量の取得原価額又は不足量の再調達価額)=払出原価額

 期中において期首超過量の取得原価および当期受入量の取得原価に基づいて先入先出法、平均法等によって払出原価額を算定する場合においては、その払出原価額と右の算式による払出原価額との間に差異が生ずるがこれは売上原価差額として処理する。
 基準量は、企業の規模その他の変化に伴う正常販売量又は正常製造量の変化に応じて変更される。基準価格は、それが決算時の時価を上回るに至れば引き下げられる。基準量の変更および基準価格の変更による棚卸資産帳簿価額の修正は一切、利益剰余金に加減することによって行なわれる。


(注6) 英国のチャータード会計士協会の意見では、低価法を適用する場合の時価として、基本的には正味実現可能価額をとる。しかし期末棚卸量が販売量に比して大きい場合、又は生産期間が長い企業、製品商品の売価が再調達原価の低落に応じて低落する事情が認められる企業にあっては、再調達原価をも考慮に入れることが必要であるとする。この場合には、取得原価、正味実現可能価額および再調達原価のうち最低の価額が評価額とされる。
 米国会計学会の意見では、もっぱら、正味実現可能価額を時価とする。
 米国公認会計士協会の意見では、根本的には、再調達原価を時価とするが、再調達原価が正味実現可能価額をこえる場合には、正味実現可能価額を時価とし、再調達原価が「正味実現可能価額から正常利益を差し引いた価額」より低い場合には、後者を時価とする。再調達原価を基本線としながら、このような上限と下限を定めているのは、再調達原価と売価との跛行関係から、再調達原価への評価切り下げが過大又は過少の評価切り下げとなるのを防ぐ趣旨である。
 米国所得税法では、再調達原価を時価とし、再調達原価が正味実現可能価額をこえる場合には、正味実現可能価額を時価とする。
 わが国法人税法では、本則として再調達原価(購入品については再買原価、生産品については再造原価)を時価とし、生産品の場合には「正味実現可能価額から利益を差し引いた価額」を時価とすることも認める(施行規則第二十条、個別通達昭三五直法一−六二、一四および一五)。
 ドイツ株式法には、取引所価格又は市場価格を低価法上の時価とし、これがない場合には「貸借対照表日の価額」を時価とする旨の規定がある。取引所価格は、貸借対照表日現在の取引所における購入原価、市場価格は、同日現在の具体的市場における購入原価と解されている。ただし、購入価格と販売価格が異なり、後者が低い場合には販売価格と解されている。「貸借対照表日の価額」は、取引所又は具体的市場が存在しない場合の実際取引価格を指し、購入品については、実際の購入原価、生産品については、正味実現可能価額から正常利益を差し引いた価額、正味実現可能価額が確定できない場合には、再造価額と解されている。
 西ドイツ株式法政府草案には貸借対照表日現在の取引所価格、市場価格、または貸借対照表日の価額からアフター・コストを差し引いた額を時価とする旨の規定が盛られた。したがって取引所価格、市場価格、貸借対照表日の価額は貸借対照表日現在における棚卸資産の販売価格を意味するもののようである。


(注7) 後入先出法に簿価時価比較低価法(切り放し方式)を併用すると、低価法の実施によって計上された未実現損失がいつまでも実現損失にならない可能性があり、したがって後入先出法をとる場合には、原価時価比較低価法(洗い替え方式)しか認めがたいという考え方がある。
 米国所得税法は、後入先出法には低価法の併用を全く認めていない。後入先出法のもとでは、価格上昇期において棚卸資産利益が課税所得として顕現せず、またこれに低価法の併用を認めると価格下落期に損金の計上を認める結果となり、他の評価方法をとる納税者に比し、後入先出法をとる納税者があまりにも有利な立場に置かれるという理由による。これに対して後入先出原価・時価比較による切り放し方式の低価法を税法に容認させようとする運動ないし主張が従来強く行なわれている。
 洗い替え方式の低価法ならば後入先出法と併用しても問題は生じないが、切り放し方式は前述の理由で税法にとり入れることが問題視されているのである。しかしながら、後入先出法の精神は、棚卸資産の正常在高について価格変動損益を期間損益から中和化させることにあり、正常在高をこえる在高については価格変動損益の中和化を図ろうとするものではないから、超過在高の評価額が時価をこえる場合には評価切下げを行なうことを容認すべきである。


(注8) 棚卸資産の確定買付契約が存在する場合において契約上の代価よりも時価が低落しており、かつ、その回復が見込まれないときには、これに対して、評価切下げを行なうことが是認されている。この見解にしたがえば、いまだ買手側の現実の棚卸資産を構成していない確定買付契約につき右の事情が確認されたときに、将来当該棚卸資産を入手したときに現実化する回収不能原価部分を切捨て、費用に計上することが許されるのである。借方「評価損」に対する貸方項目はこれを「買付契約評価引当金」として流動負債に計上する。買付契約評価引当金は、買掛金の一部の事前計上を意味する債権と解されるのである。


(注9) 期末棚卸量に生じた不可避の食込みがその後補充されたときに、その補充分につき原始原価を復活する後入先出法は、補充が行なわれた年度末に、補充分の取得原価と原始原価との差額を食込年度の売上原価修正(前期損益修正)として計上する方法である。
 食込分を食込年度の期末再調達原価で評価してその帳簿原価との差額だけ補充引当金を設定し、補充が行なわれた年度には、補充分の取得原価を最初の帳簿原価まで引き下げるために補充引当金を取りくずす後入先出引当金法も存在する。普通、補充分の取得原価と最初の帳簿原価との差と補充引当金取崩額との間に多少の誤差が生ずるが、これは前期損益修正(前期売上原価修正)として処理する。
 拘束在高法は期末棚卸量のうち期首量には期首評価額を付し、期首量を超過する数量には期末再調達原価を付する。期末数量が期首量を食い込んでいる場合には食込量に期末再調達原価を付し、期首量の評価額から食込量の評価額を差し引いた金額を期末棚卸額とするのである。
 食込量を期首評価額でなく、期末再調達原価で計算するから、インフレーション時にはそれだけインフレ利益が排除されるのである。
 拘束在高法は、基準量および基準価格を定めない点および食込みが回復されてももとの評価額を復活しない点で基準棚卸法と異なる。拘束在高法がここに説明した二つの後入先出法と異なる点は、食込補充分に最初の帳簿原価を復活しないことにある。


(注10) 贈与、交換、債権の代物弁済、現物出資、合併等によって取得した棚卸資産については、適正時価(現金買入価格、現金売却価格等)、相手方の帳簿価額等を基準にしてその取得原価を決定するのであるが、その詳細については後日「資産評価準則」を公表する際にゆずる。


(注11) 後入先出法は、いわゆる棚卸資産利益を期間利益に顕現させないようにすることを目的とする評価方法であるが、これには、物品の払出しのつど後入先出計算を行なう方法、期末材料と期末仕掛品中の材料と期末製品中の材料を通算して後入先出計算を行なう方法、材料の通算のみでなく、加工費についても期末仕掛品中の加工費と期末製品中の加工費を通算して後入先出計算を行なう方法、金額後入先出法(アメリカでいわゆるダラー・ヴァリュー後入先出法)等の区別がある。企業の諸事情、棚卸資産の性質等を考慮して最も妥当な方法が選択されるべきである。
 金額後入先出法にあっては、期末棚卸高の期末価額を最終取得原価で計算するか、期中の総平均原価で計算するか、期中の最初取得原価で計算するかにより、期末増加分の原価は最終取得原価となり、総平均原価となり、あるいは最初取得原価となる。
 金額後入先出法の適用には価格指数の算定が必要である。


(注12) 「使用資産に類する物品であっても、その実体が徐々に製品に化体していくもの、耐用期間がきわめて短いもの又は取得原価が微細なものは棚卸資産である。」というのは、その供用前の保有高を棚卸資産とする趣旨であるが、供用中のものであっても払出額を棚卸の方法又は月割計算の方法によって徐々に費用化していく場合には、いまだ費用化されない残高も棚卸資産を構成すると解すべきである。


(注13) 後入先出法については、不可抗力(戦争等)による期末在庫量の食込みが生じた場合には、これに対する救済手段として食込量が補充された場合において最初の帳簿原価を復活させる方法を特別立法によって認めることが望ましい。


(注14) 売価還元法にあっては、本文の第一、三、2に述べるような方法で低価基準の評価を行なうのを例とする。売価還元法にあっては、期末商品の時価としてその再調達原価を直接に把握することが困難なためである。
 期末商品の時価として正味実現可能価額又は「正味実現可能価額から正常利益を差し引いた価額」を把握し、売価還元平均原価と比較することによって評価切下額を決定する低価法の適用は、小売業にとって必ずしも不可能ではないが、実際問題として利用されていない。かつ、施行規則は購入品の時価を再買原価(仕入時価)と定めているのであるから、原価率によって再買原価に相当する価額を推定する結果となる通常の売価還元低価法の採用を認めることが理論的である。


(注15) 企業会計審議会から近く発表される「原価計算基準」は、原価差額の調整に関して次の基準を表明しているので、充分に参酌されたい。

(一)  実際原価計算制度の場合における原価差異の処理は、次の方法による。

 原価差異は、材料受入価格差異を除き、原則として当年度の売上原価に賦課する。

 材料受入価格差異は、当年度の材料の払出高と期末在高に配賦する。この場合、材料の期末在高については、材料の適当な種類群別に配賦する。

 予定価格等が不適当なため、比較的多額の原価差異が発生する場合、直接材料費、直接労務費、直接経費および製造間接費に関する原価差異の処理は、次の方法による。

(1)  個別原価計算の場合

  次の方法のいずれかによる。

 当年度の売上原価と期末における棚卸資産に指図書別に配賦する。

 当年度の売上原価と期末における棚卸資産に科目別に配賦する。

(2)  総合原価計算の場合

  当年度の売上原価と期末における棚卸資産に科目別に配賦する。

(二)  標準原価計算制度における原価差異の処理は、おおむね次の方法による。

 数量差異、作業時間差異、能力差異等であって異常偶然な状態に基づくと認められるものは、これを非原価項目として処理する。

 その他の原価差異は、実際原価計算制度の場合に準じて処理する。

 「原価計算基準」は、差額調整について右のように述べているが、なお原価差額の調整に関しては、全面的に申告書による調整を行ないうるように現行法を改めることを要望する声が強いので、この点検討すべきである。

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