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創業費
ここに創業費とは、株式会社の法律上の成立までの間に支出された設立費、および成立後営業の開始までの間に支出された開業費をいう。
創業費は、会社の創業に関連するものであるから、その金額は、開業後の営業活動が負担すべき費用として処理すべきものと考えられる。もちろん、企業の営業活動は無限に続くものと想定することができるが、創業費を配分すべき期間は、最大限五年間と認定し、したがって、その金額をこの期間中に償却すべき繰延資産とすることが適当である。
設立費の主要なものには、定款・諸規則作成の費用、株式募集その他のための広告費、株式申込証・目論見書・株券等の印刷費・創立事務所の賃借料、設立事務のために使用する使用人の給料手当、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、創立総会のための費用、その他会社設立事務に関する必要な費用で会社の負担に属する金額、および、発起人が受ける報酬で定款に記載して裁判所又は創立総会の承認を受けた金額、ならびに、設立登記の登録税がある。一方、開業費は、会社の設立後営業の開始のときまでに支払われた開業準備のための費用であるから、このなかには、土地建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利息、使用人の給料手当、保険料、電気・ガス・水道料等の費用のすべてが含まれることとなる。
商法一六八条第一項第七号の規定によれば、会社の負担に帰すべき設立費用と発起人が受けるべき報酬の額は、これを定款に記載しなければ効力を有しないとされている。したがって、これらと設立登記のための税額とを加えた設立費の内容と金額は、きわめて明確に確定することができる。
これに対し、開業費は、すでに会計単位としての会社が成立してから営業を開始するときまでの支出である。開業費の範囲については、それは開業までに支出された一切の費用を含むとする考え方、ならびに、開業費は開業準備のため直接に支出した金額に限るものとし、したがって、一般管理費に属する一部の費用は、これを含ませるべきではないとする考え方の二つに分けることができる。前者の考え方によれば、場合によっては、損益計算書が作成されないことがあり、また、後者の考え方によれば、損益計算書には当期純損失が計上されることが普通となるので、二つの考え方の差異は、このような結果上の差異として考えることが適当である。これと同様の見方は、受取利息をはじめとする営業外収益を、開業費から差し引くべきか、もしくは、営業外収益として掲げるべきかという問題、ならびに、支払利息をはじめとする営業外費用を開業費に含めて繰り延べるべきかどうかという問題についても、同様に適用することができる。
創業費の償却については、二つの異なった方式を選択適用することができる。その第一は、設立費と開業費を一括して償却を行なう方式である。すなわち、営業の全部もしくは一部を開始することによって、営業収益があがった年度の末から創業費の償却を開始していくのであるが、この時期は、営業の一部を開始したときに限る必要はなく、その全部を開始したときとすることができる。これに対し、その第二は、設立費については、会社成立のときから償却を開始し、また開業費については、開業のときから償却を開始する方式である。
なお、いずれの方式による場合でも、償却の期間は、最大限五年内にとどめるべきであり、また、毎期間の償却額は均等額であることが望ましい。
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ロ |
社債発行割引料
社債を券面額以下の価額で発行した場合、券面額と発行価額との差額を社債発行割引料という。社債の割引発行は、社債の応募者利回りが市場の平均利子率より低い場合、発行者利回りを引き上げることによって応募条件を有利にするために行なわれるものであるから、社債発行割引料は、利息の前払に似た性格を有する。
したがって、社債発行割引料は、その全額を社債を発行した期間の費用とするよりも、社債の発行から社債の償還に至るまでの期間にわたる費用として配分することが適当である。この結果、社債発行割引料は、繰延経理の対象となり、繰延資産とされるのである。
繰延経理された社債発行割引料は、社債発行から社債償還に至るまでの期間内に、償却されなければならない。しかし、社債発行割引料は、割引発行された社債にかかわるものであるから、その社債の一部が、予定された償還期日前の繰上償還、もしくは借替などによって減少するときには、割引発行した社債総額に対する減少額の割合に従って、社債発行割引料を償却する必要がある。
このような特殊の場合を除けば、社債発行割引料は、社債発行から社債償還に至るまでに期間内に、時間の経過を基準として、毎期の損益計算の費用として計上されるよう、その償却を継続的に行なっていくことが必要である。
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ハ |
社債発行費
社債の発行に当たり直接に支出した金額、たとえば、募集広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、社債申込証・目論見書・社債券等の印刷費、社債登録税等は、この発行にかかわる社債の償還期間にわたる費用として、毎期均等額を配分することが合理的である。すなわち、社債発行費は、繰延資産として取り扱われなければならない。
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ニ |
株式発行費
会社が創立されたのち、新たに株式を発行する場合、それに直接支出した金額、たとえば、募集広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、株式申込証・目論見書・株券等の印刷費、変更登記のための登録税等を、株式発行の行なわれた期間にかかわる損益計算の費用として計上することは適当ではない。けだし、株式発行の効果は、たんに、発行した期間のみでなく、将来にも及ぶからである。かくして、株式発行費は、繰延経理の対象となるのであるが、繰延期間は三年程度が適当であろう。この期間は客観的な根拠に基づいて定められるものではないが、一たん、繰延期間を決定すれば、毎決算期ごとに均等額を償却していくことによって、毎期の損益計算の正常性が保証されることとなる。
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ホ |
開発費
ここに開発費とは、現に営業活動を行なっている企業が、新技術の採用、新資源の開発、新市場の開拓等の目的をもって支出した金額、ならびに、現に採用している経営組織の改善を行なうために支出した金額等をいう。したがって、開発費には、経常費的な性格をもつものは含まれない。けだし、企業が現に採用している技術、および、現に保有している市場とくに販売市場に関係しない支出額は、支出の期以降の販売収益に貢献するものであり、また、現に採用している経営組織の改善のための支出額は、もっぱら、将来に至ってその効果が発現すると予想されるので、毎期の収益に対応させるべき毎期の費用とは区別されるからである。
開発費は、ある特定の目的にかかわる支出額であるから、それらの具体的内容は、きわめて多様である。たとえば、新技術の採用のために支出した金額には、技術導入費、特許権使用に関する頭金等が含まれ、新資源の開発のための支出額には、鉱山業における新鉱道の開さくに要した金額等、また、新市場の開拓のための支出額には、広告宣伝費、市場調査費等が含まれる。開発費の償却は、支出が行なわれた期間の末から開始し、五年以内の期間にわたって、これを行なうことが適当とされる。
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ヘ |
試験研究費
ここに試験研究費とは、現に営業活動を営んでいる企業が、新製品の試験的製作、あるいは新技術の研究等のため特別に支出した金額をいう。したがって、この試験研究費には、企業が現に生産している製品又は採用している技術の改良等の目的で、継続的に行なわれる試験研究のための支出は含まれない。
試験研究費を構成する支出は、開発費の場合と同じく、きわめて多様である。ただし、試験研究のため特別に設計した設備で、研究終了後、使用しうると思われるものについては、これを試験研究費に含ませないか、もしくは、一応、試験研究費として処理し、転用時の金額を推定して、これを試験研究費の償却額の計算から控除することができる。また、試験研究の段階において発生した収益があれば、この金額を試験研究費から控除するか、もしくは、その金額だけ当該期間の償却額を増加させるものとする。
試験研究費は、当期中の収益とは関係を有しないので、繰延経理の対象となる。その償却開始の時期は、支出の行なわれた期間の末のみでなく、試験研究が完了して、本格的な操業もしくは生産が開始されたときとすることができる。試験研究費の償却は、五年以内の期間にわたって、これを行なうことが適当とされる。
試験研究が成功したときでも、試験研究費の未償却残高を資産とくに無形固定資産に振り替える必要はなく、逆に、失敗したときでも、これを全額償却して、その金額を営業外費用もしくは繰越利益剰余金減少高として処理しなくてもさしつかえない。けだし、試験研究費を一定の期間にわたって規則的に償却することにより、毎期の損益計算の正常性が、完全に保てるからである。
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ト |
その他の繰延資産
ある支出額を繰延経理したとき、その金額、もしくはその金額から償却額を控除した金額を貸借対照表に記載するときは、その内容を示す科目をもって繰延勘定の区分に掲記しなければならない。これを仮払金あるいは未決算勘定として流動資産の部に掲記することは、企業の財政状態に関する真実の報告をなしたことにはならない。
このような繰延資産としては、通常、家屋等の賃借にかかわる権利金および立退料、公共的施設等の施設のための支出、製品の宣伝のために用いられる固定資産の贈与にかかわる支出等をあげることができるが、固定資産の取得に当たって支出した移転等のための補償金も、繰延経理されることがある。ただし、これらの金額はあらゆる場合に繰延経理されるのではなく、その支出の内容に従い、繰延経理の対象となるのであるから、その償却期間も、状況に応じ適当に決定しなければならない。
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