一 |
基本原則
1 |
監査人は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて意見を表明しなければならない。
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2 |
監査人は、財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して適正に表示されているかどうかの判断に当たっては、経営者が採用した会計方針が、企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうかのみならず、その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうか並びに財務諸表の表示方法が適切であるかどうかについても評価しなければならない。
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3 |
監査人は、監査意見の表明に当たっては、監査リスクを合理的に低い水準に抑えた上で、自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得なければならない。
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4 |
監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得られないときは、意見を表明してはならない。
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5 |
監査人は、意見の表明に先立ち、自らの意見が一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に形成されていることを確かめるため、意見表明に関する審査を受けなければならない。
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二 |
監査報告書の記載区分
1 |
監査人は、監査報告書において、監査の対象、実施した監査の概要及び財務諸表に対する意見を明瞭かつ簡潔に記載しなければならない。ただし、意見を表明しない場合には、その旨を監査報告書に記載しなければならない。
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2 |
監査人は、財務諸表の表示が適正であると判断し、その判断に関して説明を付す必要がある事項及び財務諸表の記載について強調する必要がある事項を監査報告書において情報として追記する場合には、意見の表明とは明確に区別しなければならない。
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三 |
無限定適正意見の記載事項
監査人は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められると判断したときは、その旨の意見(この場合の意見を「無限定適正意見」という。)を表明しなければならない。この場合には、監査報告書に次の記載を行うものとする。
(1) |
監査の対象
監査対象とした財務諸表の範囲、財務諸表の作成責任は経営者にあること、監査人の責任は独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにあること
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(2) |
実施した監査の概要
一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行ったこと、監査の基準は監査人に財務諸表に重要な虚偽の表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めていること、監査は試査を基礎として行われていること、監査は経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りの評価も含め全体としての財務諸表の表示を検討していること、監査の結果として意見表明のための合理的な基礎を得たこと
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(3) |
財務諸表に対する意見
経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められること
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四 |
意見に関する除外
1 |
監査人は、経営者が採用した会計方針の選択及びその適用方法、財務諸表の表示方法に関して不適切なものがあり、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が財務諸表を全体として虚偽の表示に当たるとするほどには重要でないと判断したときには、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならない。この場合には、財務諸表に対する意見において、除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響を記載しなければならない。
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2 |
監査人は、経営者が採用した会計方針の選択及びその適用方法、財務諸表の表示方法に関して著しく不適切なものがあり、財務諸表が全体として虚偽の表示に当たると判断した場合には、財務諸表が不適正である旨の意見を表明しなければならない。この場合には、財務諸表に対する意見において、財務諸表が不適正である旨及びその理由を記載しなければならない。
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五 |
監査範囲の制約
1 |
監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が財務諸表に対する意見表明ができないほどには重要でないと判断したときには、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならない。この場合には、実施した監査の概要において実施できなかった監査手続を記載し、財務諸表に対する意見において当該事実が影響する事項を記載しなければならない。
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2 |
監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、財務諸表に対する意見表明のための合理的な基礎を得ることができなかったときには、意見を表明してはならない。この場合には、財務諸表に対する意見を表明しない旨及びその理由を記載しなければならない。
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3 |
監査人は、他の監査人が実施した監査の重要な事項について、その監査の結果を利用できないと判断したときに、更に当該事項について、重要な監査手続を追加して実施できなかった場合には、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断しなければならない。
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4 |
監査人は、将来の帰結が予測し得ない事象又は状況について、財務諸表に与える当該事象又は状況の影響が複合的かつ多岐にわたる場合には、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明ができるか否かを慎重に判断しなければならない。
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六 |
継続企業の前提
1 |
監査人は、継続企業の前提に重要な疑義が認められるときに、その重要な疑義に関わる事項が財務諸表に適切に記載されていると判断して無限定適正意見を表明する場合には、当該重要な疑義に関する事項について監査報告書に追記しなければならない。
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2 |
監査人は、継続企業の前提に重要な疑義が認められるときに、その重要な疑義に関わる事項が財務諸表に適切に記載されていないと判断した場合は、当該不適切な記載についての除外事項を付した限定付適正意見を表明するか、又は、財務諸表が不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない。
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3 |
監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在している場合において、経営者がその疑義を解消させるための合理的な経営計画等を提示しないときには、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断しなければならない。
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4 |
監査人は、継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切でない場合には、継続企業を前提とした財務諸表については不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない。
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七 |
追記情報
監査人は、次に掲げる事項その他説明又は強調することが適当と判断した事項は、監査報告書に情報として追記するものとする。
(1) |
正当な理由による会計方針の変更
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(2) |
重要な偶発事象
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(3) |
重要な後発事象
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(4) |
監査した財務諸表を含む開示書類における当該財務諸表の表示とその他の記載内容との重要な相違
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